未だに知らない

本や漫画、映画の記録帳です。

空飛ぶ馬

作家の米澤穂信先生のファンなんです。
「小説野生時代」の2013年11月号の米澤先生の特集で、大学生時代に読んだ本として「空飛ぶ馬」と「六の宮の姫君」が紹介されていて、手に取りました。
実は、こんなシリーズ物だと知らず、近場の書店を何店か巡って見つけた時に「えっ」と動揺しましたが、シリーズ5冊買いました。ただいま、読破中です。

大学生の「私」が出合う「日常の謎」を、落語家の円紫さんが軽やかに解いていくシリーズの第一冊目です。短編が5本入っていて、彼女の一人称で話が進んでいきます。
名前は出てこない「私」の語り口が、コミカルで、暖かく、そして若くていい。
なんとなく、自分が大学生だったころに姿を重ねつつ読んじゃいますね。
部活ばっかりで、こんなさわやかな大学生活にご縁はありませんでしたが。

「砂糖合戦」と「胡桃の中の鳥」、「赤頭巾」とすこぶる後味が悪いです。
いいのは最初の「織部の霊」と「空飛ぶ馬」だけ。
でも、この後味の悪さが癖になる感じ。
ハッピーエンドばかりじゃないですもんね、世の中。

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「ゆきちゃん。秘密、どうした?」
私が声をかけると、ゆきちゃんは途端につまらなさそうな表情をして、
「あのねえ、ゆきちゃん、ひみつ、もうたべちゃったの」
(184ページより)

 

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)